●推薦の辞 経営哲学学会代表理事 三戸 公
『経営学史事典』文眞堂,2002年が,経営学史学会創立10周年を隆盛裡に迎え,それを記念し,総力を結集してここに成った。当学会はもちろん,日本の経営学さらには日本の学問にとって意義深いものがある。
経営学は成立して100年,その背後にある企業のマーケティングとイノベーションのサバイバル競争を中心として形成せられてきた組織社会,管理社会の要請に応えて発展し現在に到っている。そして,現代における最重要な学としての認識が次第に拡がりつつある。
だが,この学の極めて多彩かつ広範な展開は未だなお定説をもたせていない。それゆえ経営学は経営学史としてのみ全貌をつかむほかない。したがって,本事典は経営学事典として読まれるべきものである。同時に,この事典は引く辞典として十分な配慮が為されている。
ここに,本事典の刊行が経営学関係者・学生のみならず,実務家,さらに人文・社会諸学者に広く迎えられることを願う。
●本書「はじめに」より 経営学史学会理事長 村田 晴夫
経営学史学会創立10周年に当たって,記念行事として『経営学史事典』を編して広く会員にその研究の資を投じ,斯学に関心をもつ同学の諸氏にたいしてひとしくその研究の資とならんことを念願し,かつはさらに広くこの分野にたいする関心を喚起せんとすることを念じて,これを世に送ることとした。もちろん,この事業にはこの10年間に成長してきた経営学史学会の総力を結集することによって,われわれの現時点での指標とし,今後の発展のための基礎とすることがその基本にあることは言うまでもない。(中略)
『経営学史事典』は,このような経営学史研究の使命を自覚し,その視点に立って編集されている。そしてそれと同時に,諸研究者並びに諸実務家,そしてさらに願わくは諸市民,これら諸々の交流に便宜を供することによって,経営学史研究の進展が一層促進されるようにとの願いがこめられている。
以上のことから,この『経営学史事典』は学史・理論の単なる辞典ではなく,経営学史研究の展望ともなり,用語の解説ともなるように編集されている。具体的には,経営学史研究の意義と方法が述べられ,つづいて経営学研究の史的展開が,各国別に,また主要問題領域別に展開されている。そしてそれにつづいて,事項と経営学の名著・古典・基本文献,さらに人名,を知るための便を供する内容となっている。